【研究】 アルコール分解酵素の遺伝

日本人は(世界的にみて)下戸=アルコールを体内で正常に分解できない人が多いと言われています。
ヒトの体内では、アルコールはまずアセトアルデヒドに分解されます。
アセトアルデヒドは毒性が強いですが(アセトアルデヒドが体内に残る=二日酔い)、これを分解するのに必要な酵素ALDH1、ALDH2(アルデヒト脱水酵素)を生産する能力は遺伝的に決まっています。

ALDH2をコードしている遺伝子のたった一つの塩基が正常型から変異すると、アセトアルデヒドが分解できなくなります。
この分解酵素の生産能力によって、日本人は次の3つのタイプに分かれるそうです。

(A)全く酒を飲めない人(どんなに「鍛えて」も飲めるようにならない人)
(B)鍛えれば少し飲めるようになる人
(C)鍛えなくても、お酒を飲める人

でもなんでBとCがそんなに能力違うのかなぁと前から思っていたのですが、最近下記の本を読んで謎が解けました。


日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)
日本放送出版協会
篠田 謙一

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そうなると、一つだけ持っている人は、お酒の強さに関して言えば、ちょうど中間の能力を持つと考えたくなりますが、事情はちょっと複雑です。実はALDH2は、この遺伝子から作られるタンパク質のユニットが4つ合体して機能していますので、そのなかに一つでも変異型を持っていると正常に働きません。ですから四つのユニットすべてが正常型で構成されるのは確率的には十六分の一になってしまうのです。つまり正常型の遺伝子を一つもっているアセトアルデヒド分解能力は、二つ持つ人に比べると約六%ということになります。

(「日本人になった祖先たち」pp34-35)
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仮に、ALDH2の正常型の遺伝子をA、変異方をaとすると、私の場合
Aa(母)----Aa(父)
      |
     AA(私)
なので、私は両親よりお酒を飲めます(ちなみにフランス料理のシェフやっている私の妹もきっとAA)。

夫は、多分
Aa(母)----AA(父)
      |
     AA(夫)

おそらく娘は
AA(私)----AA(夫)
      |
     AA(娘)

なので、我が家は酒豪一家になること確定?(この先、もし2人目が産まれてもAAになるし)
でも娘がAaやaaの人を結婚相手に選んだら、孫はAaになるかも…

それから「日本人になった祖先たち」によると、ALDH2の変異型遺伝子の頻度はアフリカ、ヨーロッパでは0%=アフリカとヨーロッパには下戸はいない。
世界的にこの変異型が多いのは東アジアで、おそらく2万以上前(でも出アフリカ後だから8万年前よりは後)に中国南部で発生して、周辺に広がったと考えられているようです。

「日本人全体では正常型を持つ人が56%、1つの人が38%、変異型二つの人が4%存在すると言われていますが、日本における分布を県別にみてみると、地域的な偏りがあることがわかります。変異型は近畿地方を中心とした日本の中部地域に多く、正常型は東北と南九州、四国の太平洋側に多いのです。」(p37)

「日本人になった祖先たち」では、この後、どうして上記の地域に正常型が多いのか、という人類学的議論につながっていくのですが、個人的に興味深いのは、上記の正常型が多い地域は、強いお酒をよく飲む文化圏と重なりそう、という点。
特に南九州、四国の太平洋側は焼酎よく飲んでいるイメージがあるのですが。
このALDH2の変異型遺伝子の話は結構有名なので、きっと文化人類学的側面からも色々議論されているんでしょうね。

参考: 酒に強い人弱い人の全国分布

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