【書籍】 自然出産の智慧

せっかくの機会なので、共著の本(セックスの人類学)が本屋で並んでいるところをみてみようと、新宿の紀伊国屋へ。
そこで前から「こういう文献ないかなぁ」と思っていた、そのものズバリ、の本をみつけました。


自然出産の智慧―非西洋社会の女性たちが伝えてきたお産の文化
日本教文社
ジュディス ゴールドスミス

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伝統的な生活を営んでいる民族の女性達が、近代医療に頼らずにどんな風に出産しているのか、トラブルや死亡の割合などを知りたいと思っていたのですが、この本はまさにそうしたことをレビューしています。
予想どおり、妊娠・出産によるトラブルは少なく、まして妊婦が死亡することはほとんどないようです。

妊娠してから自分が見聞きした話から、

現代の女性は、医療の助けなしで出産する為には、妊娠中から運動や食事管理をきちんと行って「体づくり」をしなければならない
=体が本来の状態なら、出産の為に医療の助けは必要ない

ということを漠然と感じていました。

よくまことしやかに「ヒトは直立二足歩行をするようになってから、難産になった」と言われるけど、本当にそうなのか??
野生のオランウータンが妊娠・出産で死亡することがほとんどないのに、動物園では主要な死亡原因になっている。
今生きている人間が難産だからといって、初期人類まで同じように危険なお産をしていたと考えるのは、おかしいんじゃない??と思っていたのですが。
確かに一部の発展途上国では、未だに成人女性の死亡原因として、妊娠・出産に関わるトラブルが上位に来ているけど、「発展途上国の女性が置かれている状況=初期人類の生息環境」、ではないだろうし。

その場では後の予定もあったのでこの本を購入できなかったのですが、近々購入して、出産前までに読んでみようと思います。


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2009.5.10 追記

読了。参考文献の脚注や参照の仕方がとても丁寧で、ヒトの本来の出産について調べるのには良書。
ちょっとフェミニズムが入っている部分もあるので、そのあたりは若干斜め読みする必要があるけど(母系社会→父系社会という流れ)。

でも新しい発見は少なかった。
部族社会が実践していた出産にまつわる慣習は、私が見聞している、最近の日本でのお産に関わる指導と、ほとんど同じ。

○妊婦・授乳している母親は、乳製品や肉、脂肪、甘い物は避ける
○妊婦は運動すべし(特に妊娠後期)
○陣痛が始まったら、じっとするよりもなるべく動き回る

今は、中世以降(特に産業革命以降)、迷走していたお産が、本来の姿に戻りつつある、ってことなんだろうなぁ。
「なじみの場所で親しい人に囲まれて出産することは、感染症のリスクを下げることもつながる」には納得。
病院=清潔、自宅=清潔ではない、みたいなイメージがそもそも間違っていることに改めて気づかされた。
病院=不特定多数の「健康でない」見知らぬ人達が沢山いる場所、でもあるんだよなぁ。

著者の姿勢も、やみくもに「部族社会に戻ろう(自然なお産をしよう)」というのではなく、部族社会の問題点もきっちり指摘しているところは好感大。
部族社会で幼児死亡率が高いのは、適当な離乳食がないから、という指摘はするどい。
それから現代では、様々な人種間で子供が生まれるので、骨盤の大きさと胎児の大きさが釣り合わない場合も多いから注意が必要とか。

部族社会の正常なお産が、初期の欧米人の目に触れることがほとんどなかったので、誤った言説が流布したのかもしれない、という説も説得力があった。

○白人の医者が呼ばれるのは、異常出産、難産の時(正常な時は呼ばれない)
○陣痛が始まってから分娩までの時間が短く(2~3時間)、出産後に女性はすぐに通常の生活に戻るので、外部の人が正常な出産に立ち会うことは難しい
○出産はごく親しい身内(女性のみの場合が多い)に囲まれて行われるプライベートなことので、白人のしかも男性が立ち会うことは困難(話を聞くのも難しい)
※親しい人だけに限定するのは、母子を感染症から守る意味もある

とりあえず、「人類は直立二足歩行するようになって、難産になった」説は、やっぱり間違っている、と思う。
そんなに難産で成人女性がバタバタ死ぬような社会だったら、ヒトはヒトとして成立しなかったって。

とはいえ、現代人の生活は、本来のヒトの生活とは大きくかわってしまっているから、「出産は病気ではない」と安易に考えるのは危険。
この本の著者も指摘しているけど、少なくとも妊娠中の定期検診はきちんと受けるべき。
異常がなく、自分できちんと体調管理もできるなら(←これが結構難しいけど)、出産はもっと安く、楽に、できることだと思う。

次はこの本を読んでみようと思ってます。



お産の歴史 (集英社新書)
集英社
杉立 義一

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この記事へのコメント

アオキ
2009年05月07日 22:17
その本来の身体を維持できない生活をしてるって事ですね。自分を鑑みるに…動物としてはダメ一直線の生活してます。javascript:putEmoji2(%22ブロっくまジタバタdeka%22,%20object_id%20)
nouko
2009年05月08日 11:08
アオキさん、コメントありがとうございます。
今の日本で「本来の身体を維持する生活」って、ほとんど不可能に近いですよね(自給自足を目指しても、農業ですらヒトの「本来の生活」ではないし)。
どう折り合いをつけて生活していくか、が必要なのかもしれません。
折り合いつけることもあきらめる、というのも一つの選択肢ですが(笑)

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