「マキャベリ的知性と心の理論の進化論〈2〉新たなる展開」

ついに読み終わった…
マキャベリ的知性と心の理論の進化論〈2〉新たなる展開
これもマキャベリ的知性と心の理論の進化論―ヒトはなぜ賢くなったかに負けず劣らずおもしろかった。
特におもしろかったのは、

10章 社会的知性のモジュール性
11章 技術的知性仮説:知性の進化を促したもう1つ刺激とは?
12章 プロテウス的霊長類:競合と求愛における適応的な予測可能性の進化

「領域固有的なメカニズムなしでは、生命体は何を探すべきか、あるいは無限にありうる因果結合のうちどれを確かめるべきかということを「知る」ことはできないだろう。このような生命体は、考えつくすべてのものを計測し、莫大な数の相関マトリックスを計算して有意な相関をめくらめっぽう探す量固執的な研究者のように、データの分析で麻痺してしまうのではないだろうか。」(第10章p255)

領域固有的なメカニズムというのは
「動物は、やみくもにも刺激に対する反応を条件づけるのではなく、条件づけしやすい刺激と反応の組み合わせvs条件づけしにくい組合せ、がある」
ということ。
例えば、実験室で育てられたサルは毒ヘビに対して恐怖を示すことはないが、他のサルがヘビに対して恐怖反応を示すところを見せられると、ヘビを怖がるようになる。が、同じことが花に対しては成立しない(花を怖がるようにはならない)。

「マキャベリ的知性と心の理論の進化論<1>」でも人間が時には石などの無生物でさえ「擬人化」してしまうことを、社会的知性との絡みから論じていた。ここでは「社会的知性は領域固有的であり、かつ本来の領域と現実の領域を持っている」そして「ヒトの社会的知性のモジュールの現実の領域は、ヒトを超えて広げることができる」と。
つまり、「本来」ヒトを対象として適応してきたはずの社会的なカテゴリーや意図性、道徳を、「現実」にはヒトではないもの(例えばイヌ)に適応してしまっている、と筆者(ゲルト・ギーゲレンツァー)は指摘している。
人間のある種の愚かさの象徴ともいえるような「擬人化」が、「知性の進化」という側面から見ると、人間の知性の本質に迫る手がかりの一つ、と捉えられる点がおもしろい。
この後に続く、「知的モジュールは満足化アルゴリズムとともにはたらく」という話もおもしろかった。
この辺は最近の人工知能の開発とかなり関連してそう。

11章のテーマはずばり、「なぜ類人猿の知性が高いのか?」。離合集散性の社会構造、大きな体、樹上性、果実食、といったキーワードがあげられているけど、意外と盲点なのは「大きな体」。
真猿類と類人猿の間には明らかに知性のルビコン川ともいうべき飛躍(溝)がある。
そして、この2つにしか見られない違いは「体の大きさ」。
他のキーワードは真猿類の中でも見られるが、これだけは類人猿と真猿類の間で絶対的に違う。
でも、この章を読んでいて気になるのは「小型類人猿(テナガザル)」の存在。
社会的知性仮説全般を通じていえるけど、小型類人猿に関する実験も野外観察もデータがほとんどない。
しかもこの本(〈2〉新たなる展開)でさえ原書が出版されたのは1997年。ここ数年の学会発表みるかぎりでは、相変わらず小型類人猿のデータは少ない。
野外観察は一応地道に続けられているみたいだけど、認知実験が非常に少ない気がする。
実験しても学会発表や論文にできるような結果が得られないってことなのかなぁ。

12章 「真の予測不可能性は、予測的な読心に対する最高の防御である」
動物の行動は常に予測不可能性をはらんでおり、今までの行動学はそれを「誤差」と見なしていた。
しかし、マキャベリ的知性という視点から見ると、「自分自身でさえ予測できないことは、他者にすら予測できない=最高の防御」。
人間が「自分でもどうしてそんなことをしたのかわからない」「なんとなく」「気分」と言っていたことが、じつは他者にだまされることを防ぐ防御策だった??
もちろん、こういった行動の中には、本人が意識していないだけで、行動学的(心理学的)にはちゃんと説明できることもあるんだろう。
しかし、「(人間を含む)動物は他者に100%行動を予測されることを防ぐために、予測不可能性を進化させてきた」という発想はコペルニクス的転回でかなりおもしろいと思った。
マキャベリ的知性仮説がある程度認められてきたからこそ、説得力のある説ともいえる。

というわけで、2冊とも非常に良書。私が今まで読んだ本の中で、確実にTOP10には入る。
ちと高いけど、こういう話題に関心のある人なら読んで損はない。絶対に。
けど、すでに原書が出版されたのは1988年&1997年。早く読まないと最新の研究成果とのずれがますます大きくなってくるなぁ(でも少なくともあと10年は読む価値のある名著だと思うけど)。

-----------------------------
2005.4.11 追記

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

ガンジー
2005年04月09日 07:46
こういう本の紹介は,たいへんありがたいです。
いつもたのしみに読んでま~す(^^)
nouko
2005年04月12日 01:14
ありがとうございます。
せっかくコメントもいただいたので、当初のものに書き足して完成させました。
今後ともよろしくお願いしますm(__)m

この記事へのトラックバック