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zoom RSS 【書評】 100万人のフィールドワーカーシリーズ12巻「女も男もフィールドへ」(古今書院)

<<   作成日時 : 2016/06/09 16:13   >>

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私も1章執筆したこの本、自分以外の章は出版前に読んでいなかったので、一読者として読んでみました。
このシリーズは、1つのテーマに関して、とても幅広い分野の研究者(フィールドワーカー)が執筆していますが、編者が優秀で、全体の構成とイントロがよく練られているおかげで、統一感がきちんとあって、よくできた共著本だと思います。
共著本の中には、本当に章ごとにバラバラで統一感がなく、本全体として何がいいたいのかよくわからない、というものも珍しくないですが、このシリーズは違います。
自分が書いているから、というではなく、私が全く関与していない巻でも、よくできているな、と毎回感心します。

さて、前置きが長くなりましたが、内容について。
1部のジェンダーに関する話、特に女性フィールドワーカーが戸惑いながらジェンダーにまつわる問題を乗り越えて、時には自身のジェンダーを「利用」してフィールドワークする姿は、「あるある」と思いながら読みました。
おしむらくは、この章に、ノーマルの男性が、男性として期待されるジェンダーに戸惑ったり、女性との違いに衝撃を受けた経験などの話があれば、さらに幅が広がったんじゃないかな、と思いました(そういう人を見つけるのは大変ですが)。

2部は子連れ、家族でのフィールドワーク(私もここに1章書いています)。
このパートは、笑いあり、涙あり、途中で感極まって、電車の中で読むのは無理、と思い、本を閉じてしまった位です。
申し訳ないが、椎野さんの章は、お子さんが空港で嘔吐した話、その時の椎野さんとお子さんの姿を想像して、思わず笑ってしまいました。
我が家でも、マレーシアから帰国する時の出国審査中に、長女がおもらしをして、抱いていた夫のTシャツがずぶ濡れになり、お土産屋でTシャツを買ったことがありました。
多分、はたからみれば笑い話だが、当時の本人達にとっては笑い事ではなかったです(椎野さんのあせりと困惑も痛いほどわかります…)。

どの章も「もう1人の自分」を見るようで、つらくもあり、うらやましくもあり…私ももっと頑張れば、これができたのかな、とか。
もしかしたら、この章は、子連れフィールドワークを諦めた人にはつらいかもしれない(フィールドワークの為に子どもを諦めた人もいれば、子どもが産まれたゆえにフィールドワークを諦めた人もいると思うので)。
あるいは、シングルでも研究もそのものを続けられなかった人(著者の酒井さんが言う「岩棚」が崩れてしまった人)にとっても、つらいかもしれない。
でも、まだ結婚も子育ても具体的にイメージできない、という若手研究者や大学生達には(男女を問わず)、「こんなことできるのか!?」という、想像を超えたロールモデルの提示にはなるかもしれない。

3部はライフイベントとフィールドワーク
出産を機にフィールドワークから遠ざかった人の四方さんの話は、本当に自分もこうなる可能性はあった、と思いもう一人の自分を見ているようで、つらかった。
特に自分自身との葛藤、夫にぶつけた言葉は、共感などという軽い言葉で済まないぐらい、その息苦しさを感じて胸がいっぱいになった。
最後の三谷さんの章は、この本の末尾を飾るにふさわしく、これから私達が何を目指してどう行動すべきか、を示してくれている。
「男性研究者の意識改革をするには、女性研究者を多く輩出してきた男性研究者の経験談を学会誌などで特集した方がよいのではないだろうか。」という意見、ぜひフィールド系に限らず、全学会で実行して欲しい(企業でもあてはまると思う)。


手前味噌かもしれないけれど、この本はフィールドワーカーに限らず、働く女性、男性に読んでもらいたいと思った。
仕事ができないあせり、パートーナー(男性)は出産前と変わらず仕事しているのに、女性だけなんでこんなに負担を負わなきゃいけないんだ、という不満。
その不満をひしひし感じる男性側。
匿名の対談やルポタージュとかで、この手の話はいくらでもあるし、功成り名を遂げた女性ビジネスマンの武勇伝的に紹介されることはあるけど、若手〜中堅の女性達が実名で、詳細に語っている、というのはあまりないんじゃないだろうか。

子連れ出張は、まだまだ少数派だとは思うけど、そうせざる得ない人達は研究者以外でもいると思うので、そういう人達にとっては、参考になる情報も多いと思う。
「こんなところにまで子ども連れて行けるのか!」という衝撃と、一方でどこにいっても変わらぬ日常(子どもの衣食住と生活リズム)を保障する苦労、意外と難しいベビーシッターの利用…
でも子連れだからこそできる経験、新たな人間関係の広がり。

赤ちゃんをかかえて、自宅から出ることすらままらないお母さんにとっては、信じられない話ばかりかもしれなけいど、「赤ちゃんがいると何もできない、どこにも行けない」という思い込みを打破するきっかけになるかもしれない。

自分も関わった本ですが、一ワーキングマザーとして、色々思うところがあったので、書いてみました。
このブログを読んで、興味を持ってくれる方がいれば幸いです。

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