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zoom RSS 【研究】 オランウータンの認知科学の現状

<<   作成日時 : 2016/04/19 22:40   >>

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最近、オランウータンの認知能力に関して質問を受けて、少し調べたので、ここに備忘録がわりにのせます。
私は今は認知科学ではなく、繁殖を専門にして研究しているので、最新の知見はおさえきれていませんが、知っている範囲のまとめ。
少し古いですが、下記の文献は鉄板。

Parker ST, Mitchell RW, Miles HL (eds) (1999) The Mentalities of Gorillas and Orangutans: Comparative Perspectives. Cambridge University Press, New York, US

The Mentalities of Gorillas and Orangutans: Comparative Perspectives
Cambridge University Press
1999-08-26

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私が知る限りでは、上記の本が、比較的詳しく、オランウータン&ゴリラと、チンパンジー&ボノボの行動、認知能力の違いを網羅しているものだと思います。
基本的には、オランウータンとチンパンジーでは、道具使用等の物理的な認知能力や、行動面では大きな違いはない、というのが上記の本の結論です(むしろ、ゴリラが、チンプやオランに比べてできないことが多い)。


それから下記の論文で、物理的認知能力の面で、オランウータンとチンパンジーに若干違いがあるのではないか、と指摘されています。
一方で、社会的認知能力の面では、ヒト(の子ども)が圧倒的に高く、オランウータンとチンパンジーの間に違いはほとんどない、ということも指摘されています。

Herrmann E, Call J, Hernandez-Lloreda MV, Hare B, Tomasello M (2007)
Humans have evolved specialized skills of social cognition: The cultural intelligence hypothesis. Science 317 (5843):1360-1366. doi:10.1126/science.1146282



比較的新しい研究として、下記の論文があります。

Kim Y, Martinez L, Choe JC, Lee D-J, Tomonaga M (2015) Orangutans (Pongo spp.) do not spontaneously share benefits with familiar conspecifics in a choice paradigm. Primates 56 (2):193-200.
doi:10.1007/s10329-015-0460-8


飼育下のオランウータン(ワカモノ)はコストがゼロで他者に食物を分配できる状況下でも、食物を分配しない、という結果を出しています。


オランウータンは野生下では単独性が強く、群れを作らないので、「社会的知性仮説」からは、「無駄に賢い(社会的な知性を駆使する機会が乏しいのに、どうしてチンパンジーに遜色ない認知能力を維持しているのかわからない)」と言われています。
一方で、ゴリラは認知実験の環境が苦手で(一頭だけ群れから離して実験する、というのが難しい。精神的に不安定になり、実験に集中できない)、彼らの本当の能力を実験で測るのは難しい、という意見を、オランウータンやゴリラの認知実験の経験がある研究者から、聞いたことがあります。


チンパンジーの研究では、食べ物が関係する実験だと、協力行動を引き出すのが難しいが、食べ物が関与しない実験だと、協力行動が発現する(上記Kimの論文のイントロに、最近の研究が紹介されています)、という傾向がみられます。
一方でオランウータンは、食べ物に対する関心や執着が、チンパンジーとは違うようです(例えば下記)。

Shumaker RW, Palkovich AM, Beck BB, Guagnano GA, Morowitz H (2001)
Spontaneous Use of Magnitude Discrimination and Ordination by Orangutan (Pongo pygmaeus). J Comp Psychol 115 (4):385-391



オランウータンはチンパンジーに比べて、社会的知性の面で劣っているのではないか、と期待している研究者は多いのですが、大きな違いを裏付けるようなしっかりしたデータはない、というのが、多分、現状だと思います。
ちなみにYork UniversityのAnne E. Russon博士がオランウータンの認知科学研究では大御所です(最初に紹介した本にも執筆されてます)。

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