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zoom RSS 【研究】マレー半島からオランウータンから絶滅した原因は狩猟ではなく気候変動?

<<   作成日時 : 2013/11/07 15:18   >>

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オランウータンは現在、スマトラ島とボルネオ島にしか分布していませんが、10万年前には中国南部やベトナムなど、ユーラシア大陸南部にも分布していたことがわかっています。
ユーラシア大陸からオランウータンが絶滅したのはいつか、そしてその要因はなんだったのか?
今までは気候変動(氷河期の乾燥化による生息地の縮小・消失)とヒト(Homo sapiencesapiens)の狩猟が、要因として語られていて、どちらがより効いたのか、議論がありました。

最近(2013年11月5日)、オンラインで公開された下記の論文では、マレーシア半島の2つの洞窟での発掘調査の結果、気候変動>ヒトの狩猟、がオランウータンの半島からの絶滅要因だろう、と提示しています。

Yasamin, K.I., et al., First discovery of Pleistocene orangutan (Pongo sp.) fossils in Peninsular Malaysia:
Biogeographic and paleoenvironmental implications, Journal of Human Evolution (2013), http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2013.09.005


<Abstの簡単な和訳>
・半島には50万年前(66万年前〜3万3千年前)にはオランウータン属が分布していた
・最終氷期(7万年〜1万年前)の乾燥化により、マレーシア半島にはオランウータンが生息できる環境(森林)が消失
・最終氷期が終わって(1万年前頃)森林が回復しても、(オランウータンが残存していた)スマトラ島・ボルネオ島とは陸続きにならなかったので、マレー半島のオランウータンの個体群は回復しなかった
・50万年以降、オランウータン属の歯のサイズが大きく変化した証拠はみつからなかった

ちなみに共著者のTshen, Lim Tze(マレーシア人)が以前からの知り合いだったので、「(オランウータンの化石について)すごい発見があって、もうすぐ論文になるんだ!」と聞いていましたが、こういう話だったのか…
さらに言うと、この論文で参照されている、現生オランウータンの標本の中には、私たちがダナムバレーで調査していて、死亡したオランウータンの雌のコドモの骨格標本も含まれています(地元のサバ大学に寄贈した)。

地球規模でヒト(Homo sapiens)が拡散した頃に、各地の大型哺乳類が絶滅しているので、「ヒトの狩猟のせいで絶滅した」vs「(気候変動による)環境変化で絶滅した」という仮説の対立は(両方を併用する場合もあり)、オランウータンに限らず、世界各地の色々な動物について言われているのですが、そこに一石を投じる結果ではあるでしょう(だからJournal of Human Evolutionに載ったのでしょう)。
とはいえ、これはマレーシア半島での話なので、そのまま世界各地にあてはまるとは思えませんが…

個人的に思うのは、(最終氷期の後)オランウータンはマレー半島に戻れなかったのに、マレーバクやスマトラサイなど他の大型哺乳類は現在まで半島に生き残っているのが気になります。
それにここの2つの遺跡からは出土していない、テナガザルの分布の変遷はどうだったのか(オランウータン以上に森林への依存度が高そうなのに)。
(ここに限らず、テナガザル属の化石は、オランウータン属に比べて数も少なく、出ないことが多い)

ちなみに、発掘している洞窟2つのうち一つは、クアラルンプール郊外にある、ヒンドゥ教の寺院で有名な観光地、バトゥ洞窟(Batu Cave)。
論文読むと、この周辺の小さな3つの洞窟で発掘しているのだけど、うち一つは観光客が出入りしている「Villa Cave」。他も寺院が入っている洞窟から、80mとかの近さ。
観光客が行き交う脇で発掘しているようなものだよなぁ。
そんなところで、数十万年前のオランウータンや他の哺乳類の化石が出るとは驚いた(でも、ボルネオの有名洞窟遺跡、Niah Caveも観光地だものなぁ)。


話はちょっと横道にそれるけど、現生のオランウータンはスマトラ・オランウータン(P.abelii)とボルネオ・オランウータン(P. pygmaeus)の二種に分類するのが普通だけど(40万年前頃分岐した、とも言われている;複数の説あり)、化石を研究している研究者達の間では、この2種に分類することは未だに受けいれられていないんだなぁ。
40万年より前に、タイやカンボジアなどで出土しているオランウータン属の化石もほとんどがP. pygmaeusになっていることを初めて知った…
もともと、種内変異(個体差)が大きいので、歯の形態で両種を区別できないので、P. pygmaeusになっているらしい。

それにしても、この論文でも、MacKinnon 1973の論文が度々引用されているよ!(もちろん、比較的最近のDelgado & van Schaik, 2000とかも引用されているけど)
類人猿の中で、リーキー3姉妹(ジェーン・グドール、ダイアン・フォッシー、ビルーテ・ガルディカス)と並んで、いつまでも引用されるパイオニアワークTop10に入るのではないだろうか…
こういう仕事ができれば、研究者冥利に尽きるよなぁ。


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