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zoom RSS 【保全】 ウォーレスの頃のボルネオ島では、オランウータンの生息密度は高かった!?

<<   作成日時 : 2012/01/14 23:55   >>

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先日、紹介した論文と同じ著者、Eric Meijaardさんのユニークな論文

Meijaard E, Welsh A, Ancrenaz M, Wich S, Nijman V, et al. (2010) Declining Orangutan Encounter Rates from Wallace to the Present Suggest the Species Was Once More Abundant. PLoS ONE 5(8): e12042. doi:10.1371/journal.pone.0012042
※無料で誰でも論文PDFをダウンロードできます(英文)

ダーウィンと一緒に「進化論」を提唱した、博物学者のアルフレッド・ラッセル・ウォーレス(Alfred Russel Wallace)は19世紀にアマゾンや東南アジアで精力的にフィールドワークを行っていました。
彼は、有名な「ウォーレス線」の発見者で、生物地理学者の父ともよばれています。
彼が書いた「マレー諸島―オランウータンと極楽鳥の土地」という本は、ボルネオ好きなら一度は読んだことがあるであろう、名著です。


マレー諸島―オランウータンと極楽鳥の土地〈上〉 (ちくま学芸文庫)
筑摩書房
アルフレッド・R. ウォーレス

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その本の中で、(ヨーロッパの博物館に送る)標本作製の為に、サラワク(ボルネオ島)でオランウータンをバンバン撃ち殺す描写があります(29頭ものオランウータンを「簡単に」捕らえることができた)。

現在、ボルネオ・オランウータンの生息密度は平均2.5頭/km2で、高くてもせいぜい5頭/km2。
でも19世紀の探検家の記録を見る限り、彼らは今よりずっと簡単にオランウータンを発見している。
当時のオランウータンの生息密度は、現在より高かったのではないか?
という仮説を確かめるために、探検記や博物館の標本の記録を調べて、過去の遭遇頻度を計算してみました、というのが最初にあげた論文の内容。
ちなみに、吉場健二さんや岡野恒也さんといった、超初期の日本人研究者の記録も引用されていました(Table S1
吉場さん、岡野さんについて詳しく知りたい方は、下記の本を参照して下さい。


オラン・ウータンの島―ボルネオ探訪記 (精選復刻紀伊国屋新書)
紀伊国屋書店
岡野 恒也

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さて分析の結果、19世紀半ば〜20世紀初頭にかけて、オランウータンの遭遇頻度は低下しており、場所によってはおよそ6分の1にまで減っていた。
遭遇頻度の低下=生息密度の低下、と安易に結論づけることはできないが、生息密度が低下していた可能性はある。
では、仮に生息密度が低下したのなら、それはなぜか?
この時期は、まだ商業的な森林伐採やプランテーションの開拓など、大規模な森林破壊は行われていなかったので、現在のような大規模な生息地の破壊が要因とはいえない。
狩猟圧が生息密度、遭遇頻度低下の大きな理由ではないか?
オランウータンは、繁殖のスピードが非常に遅いので、狩猟圧が年間1%もあれば、その地域の個体群は絶滅してしまう、という研究結果がある。
現在のオランウータンの分布をみても、狩猟採集民がいる地域には、森林が残っていてもオランウータンが生息していないことが多い。
逆に現在もオランウータンが生息している地域は、狩猟採集民がほとんどいない(オランウータンを食べないイスラム教徒が多い)。
狩猟がオランウータンの生息密度に与える影響は、今まで考えられていたよりもはるかに甚大かもしれない。

(1)ボルネオ島のオランウータンの本来の生息密度は、現在よりはるかに高かったのかもしれない(10頭/km2?)
→ボルネオ島でのオランウータンの環境収容力は検討しなおす必要があるかもしれない(現在は原生林での生息密度をもとに環境収容力を設定して、保全事業を計画しているが、それは正しくないかもしれない)。
(2)現在の生息密度が本来の値ではないのなら、オランウータンの行動、社会関係も変容しているかもしれない

というようなことが、考察で述べられています。

私はEricさんとダナムバレーで会った時(2007年頃かなぁ)に、この論文の構想を聞いて、すごいおもしろいから、それはぜひ発表して欲しい!と思いましたが、ちゃんと発表されました。
人類学者の内田亮子先生が、欧米の博物館に収蔵されているオランウータンの標本を調べた結果、古い骨折の痕跡がある標本が多数あった→野生のオランウータンも木からかなりの頻度で落ちているのではないか?という研究(文献情報は下記参照)を読んだ時も「標本を使って、こういう生態や行動に迫る研究も可能なんだ!」と、思いましたが、Ericさんの研究も、「標本(に付随する情報)を使った新たな研究」といえるでしょう。
標本はいろんな研究な可能性を秘めているなぁと改めて思いました。

オランウータンの成長と形態変異 / 研究代表者 内田亮子. -- [千葉大学], 1999. -- (科学研究費補助金(国際学術研究)研究成果報告書 ; 平成10年度)


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