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zoom RSS 【独り言】 乳房に関する人類学的?考察

<<   作成日時 : 2010/12/07 23:28   >>

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妊娠、出産、(母乳)育児を経験して、今まで学んだ人類学的知識や常識に疑問を感じるようになったことがいくつかあるのですが(もちろん、納得した点も多々あり)、その筆頭は「人間の女性の胸はなぜ大きいのか?」という話題。
一般には、

(1)ヒトは直立二足歩行をするようになって、お尻に発情(繁殖可能であること)のサインを出すよりも、胸にサインを出す方が目立つようになったから(わかりやすいから)
(2)男性が(「繁殖能力の高い徴」とみなして)胸の大きな女性を好んだから

というようなことが言われています。
もともと(1)は有名な動物学者のデズモンド・モリスがとなえた説で、今でも一般には広く信じられているようですが、人類学的には否定されています。
「(ヒトに最も近縁な)チンパンジーはお尻に発情のサインが出るが、ゴリラやオランウータンなど他の類人猿にはない(ほとんど目立たない)ので、もともとヒトの祖先にもそういう性質はなかったのだろう(チンパンジーがヒトの祖先と別れた後で独自に進化した)」と言われています。
実際、他のサルでも、お尻に発情のサインが出るかどうか、というのは種によって違っていて、独自に何回も進化してきたと言われています。
脂肪がたまることで乳房が大きくなるので、「大きな乳房=栄養状態が良い=優れた繁殖相手」として男性が胸の大きな女性を選んだ、という脂肪説の方が、今では支持されています。

しかし、自分が母乳育児を経験して、胸が大きい理由はこんな簡単に説明できないのでは?と思いました。

まず哺乳類では「胸が大きい=授乳中(基本的に哺乳類では授乳している時に乳房が膨らむ)=妊娠不可能=繁殖相手とならない」という図式があるはずなので、そもそも大きな乳房は繁殖能力の証というよりもむしろ「私は繁殖できませんよ」のサインと考える方が順当では?
なぜ本来「繁殖できませんよ」のサインが真逆の「繁殖能力ありますよ」のサインに逆転したのか?というか、本当にしているのか?
実際、(少なくとも現代では)妊娠前の胸の大きさと母乳の出の善し悪しには関係がありません。

さらに大きな胸というのは、母乳育児に不利です。
ヒトの女性では、陥没乳頭(乳頭が乳房に埋まってしまった状態=赤ちゃんが母乳を飲むのが大変)が珍しくありませんが、これはヒトの女性の胸が妊娠前から膨らんでいることが一因だと思います。
さらにもともと膨らんでいた女性の乳房は、妊娠・出産(母乳生産開始)でさらに膨らみます(3サイズ位大きくなるのは普通)。
こんなに大きなパンパンの乳房では、赤ちゃんが母乳飲むのは大変です。
実際に母乳を上手に飲ませる(飲む)為には、授乳の時に赤ちゃんを置く位置が重要ですが、これはお母さんや赤ちゃんが自然にできるというより、経験者(知識のある人)から教えてもらわないと難しい(中には自然にできる人達もいますが)。
適切でない位置で飲ませると、乳腺炎を起こしたり、乳頭に傷がついたりして、母乳育児が大変つらいものになります(実際にこれが原因でミルクに切り替えるお母さんも多い)。
他の哺乳類では、もとは膨らんでいない乳房が、出産によって少し膨らむぐらいだし、乳首も長いので、哺乳の位置で苦労するという、ことは少ないと思います(あえていうなら水棲哺乳類は少し大変かも)。

つまり「大きな胸=母乳育児不利=繁殖(自分の子どもを育てあげること)にマイナス」であり、進化の過程でヒトの女性が胸を大きくするのは、非常にコストのかかることだったと思います(せっかく出産した赤ちゃんを育てられない危険性や、乳腺炎や乳頭が傷つくなど非常に苦労する可能性がある)。
ということは、そのコストを上回る大きなメリットがあったはずです。
そこで出てくる説明は「胸の大きな女性の方が男性にもてた→より優れた遺伝子をもつ男性と子どもを作れた/男性が子育てに協力した」ということなのでしょうが、そこでも一つ疑問が。

胸が大きいことが男性にもてる秘訣なら、なぜ最初の母乳育児が終わった後(厳密には母乳育児が軌道に乗った後)、胸は小さくなってしまうのでしょう?
女性の胸はずっと大きなままでないと、男性をつなぎとめておけないのではないでしょうか?
母乳育児が軌道に乗る頃には、男性(父親)との精神的な絆が深くなり、胸の大きさなど関係なくなるのでしょうか?(実際にそういうカップルもいると思いますが…)
それとも、生理的に妊娠前に乳房をある程度大きくすることは可能だけど、母乳育児の後まで大きな乳房を維持するのは生理的に不可能なのでしょうか?

とはいえ、そもそも現代の女性の胸の大きさは、もともと生物としてのヒト本来の大きさではなかった可能性もあるので、最近の女性の胸の大きさを基準にして考えると、勇み足になるかもしれません。
栄養状態が良いと男女を問わず体格が大きくなりますし、脂肪のかたまりである乳房も当然、栄養状態の影響を受けるでしょう。
日本でも戦前より前の女性達は、もっと胸が小さかったでしょうし(今の女性の体型では、着物をきれいに着るのは大変です。胸を「平板」にするために、お腹にタオルを何枚も重ねたりしないといけません)。


ところで、霊長類学者の榎本知郎さんは、下記の本などで次のような説を唱えています。

>人間のセックスは、繁殖のための性行動に恋愛行動とでも呼べる行動がないまぜになっている。そして、母の乳房への思い入れがきっかけで、女性の乳房に脂肪がたまることが男にとって魅力になり、性淘汰の過程によって進化したと考えている。
http://homepage2.nifty.com/anthrop/sexology.htm#mamma


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個人的にはそれなりに説得力がある説かな、と思います。
でも母乳育児の後に胸が小さくなってしまったら、やっぱり男性にとっては魅力が減じてしまうのではないでしょうか?


戦後、先進国では人工ミルク全盛期が続き、母乳育児に関する知識は男性はもちろん、女性でさえもほとんどなかった位なので、乳房の進化の議論に関しても、性的魅力の部分だけ強調されて、母乳育児にまつわる困難とか乳房の変化については、議論の遡上にもあがらなかったのかもしれません。
ここ20年ぐらいで、先進国でも母乳育児の率が上がってきていますし、女性研究者も増えてきたので、「大きな乳房のコスト」ももっと真剣に取り上げられるようになる!かな??
(母乳育児に限らず、胸が大きいと肩が凝るし、走れないし、と日常生活にまつわる不便さもある)




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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
先日、胸が大きい人がひざにこどもを置いて、母乳をあげている人を見て、
「私は胸が小さかったから、ぐっとひきよせておっぱいをあげなくてはいけなくて、大変だった」と言っていました。
小さいのも大変なことがあるようです。
みやこんぶ
2010/12/12 00:22
みやこんぶさん、コメントありがとうございます。
確かに、小さいくても困ることもあるのかも。
でもいただいたコメントをきっかけに考えてみたのですが、母乳の飲みやすさに本当に重要なことって、胸の大きさよりも乳首の長さですよね。
なんでヒトの乳首はサルや他の哺乳類と比べて、あんなに短いのでしょう?乳首さえ長ければ、乳房が大きかろうが、小さかろうが、赤ちゃんも飲みにくくて困ることはないはず。お母さんも赤ちゃんを置く位置に苦労することもないし。
「男性が大きな乳房と短い乳頭を好んだから」とか言われても、大きな乳房については理由を色々ひねりだせても(栄養状態が良い証拠、母親の象徴、etc)、短い乳頭が好まれる理由を説明するのは難しいような…(しかも赤ちゃんが母乳をのみにくくなるという、明かなデメリットがあるのに)
nouko
2010/12/13 16:07

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