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zoom RSS 【研究】国際霊長類学会

<<   作成日時 : 2008/08/12 22:05   >>

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記憶が薄れないうちに国際霊長類学会の報告を少し。
今回、イギリスは物価が高いし、色々締め切りを抱えているし、かなり嫌々行ったのですが(本当はキャンセルしたかった)、いやー行ってよかった。
やっぱり自分たちでプロジェクトを一つマネジメントしている(調査地を維持している)以上、「まだやっているよ!」というアピールと、海外の仲間達と情報交換する為にも、行かなきゃダメですね。

とりあえず今回の最大の成果は、遺伝関係のサンプルの解析を頼んでいた共同研究者から予想以上の結果(速報)をもらえたこと。
「えーあの個体とこの個体は血縁あったの?!」、「うわー血縁なかったんだ…」という予想を裏切る結果の数々。
とはいえまだ未分析のサンプルもあるので、最終的な結果が出るまでにはもう少しかかりそう。

他にも最近の自分の研究に関連する話題が色々あって、共著の論文の話も進展したし、今までで1、2を争う実り多い学会でした、私にとっては。

さて、ざっとおもしろかった発表を少しだけあげると

1.「オランウータンはどのように新しい行動を生み出すのか」 by A. E. Russon
カリマンタンのリハビリテーションセンターのオランウータンは、川で魚を捕まえて、水の中で交尾をして、川を泳いで渡る、という「新しい文化」を築きつつあるらしい。

2.「オランウータンと他種における食物分配と雌の影響力」 by M. A. van Noordwijk
野生のオランウータンでもアンフランジ雄が発情雌に食べ物をとらせてあげる(食べ物を取られても怒らない=受動的な分配)、ということをするらしい。
残念ながら、食物分配が起きた後に交尾の頻度が上がるということはないらしいけれど、(食物分配がなかった場合に比べて)雌が雄のもとに比較的長く留まる傾向があるので、(一緒にいる時間が長くなることで)雄は結果的に交尾の機会を増やせるのかも、という考察でした。
しかし観察頻度が300時間に1回程度、ですよ。チンパンジーやボノボでの食物分配とも比較していたけど、あまりの頻度の低さと明瞭な行動(グルーミングや交尾)と直接結びついていない点が、むしろ会場の笑いを誘っていました(というか意図的にそこを強調して笑いをとっていた)。
ちなみに食物自体は価値がないものがほとんどなので、(雄にとっても雌にとっても)食物を介して「やりとりすること」が自体が重要なんだろう、とも言っていました。

3.「1頭のオランウータンによる、新しい音声の学習、自発的な発声と改良」 by S. A. Wich
アイオワに新しくできた施設でのエピソード的研究発表。
今まで全く報告がない新しい音声=口笛を吹くオランウータンがいて、しかも人間が短い口笛を吹けば短いのを、長い口笛を吹けば長いのを返す、という発声のコントロールもできる。
他にもいくつかおもしろい発声をする別の個体のビデオクリップの紹介があり、「えー実験しようと計画していたら、洪水が起きてしまい、今回の発表に間に合いませんでした」という洪水の写真で会場の笑いをとっていた。

そして自分では聞き逃してしまって、悔しい思いをした発表が一つ。
「大型類人猿における代用硬貨の交換:種間の違い、身振りによる要求、相互交換」by M. Pele
食物に交換できる代用硬貨を 、2個体間で相互交換できるかという認知科学実験をチンパンジー、ゴリラ、ボノボ、オランウータンでやったら、オランウータンがやたらに相手に「贈り物」をした、という内容。
認知科学の研究をしている友人がこの発表を聞いていて、「おもしろかったよ〜」と教えてくれた。

国際学会は、平行していくつものセッションが開かれているから、時々こういうことが起きるんだよなぁ。
迷ったあげく選んだ発表がたいしたことなく、行かなかった発表の方がおもしろかったという…(とはいえ事前にAbstractを熟読しておけば、この手の失敗はだいぶ減らせますが)

ちなみにこの時私が聞きに行った発表は、パソコンのトラブルで途中から(結果の説明の所から)スライド(パワーポイント)なしで身振り手振りで発表する羽目になっていました。
まだ大学院生っぽいのに頑張っていたので、最後はみんな盛大な拍手を送っていた(なんだか気の毒で途中で出られなかった…きっと同じように思った人が、あの場に何人もいたに違いない。ほとんど出て行った人がいなかったから)


でもオランウータンの研究って、国際学会に行っても、ゴリラやチンパンジーに比べたら少ないよなぁ、ホント。
研究者の数も発表数も一桁違うんじゃないだろうか。
それでも、10年前に比べれば調査地も増えたし、研究者も増えているんだろうけど。

あと今回の学会の特徴は、ポスター発表のキャンセルが多かったこと。
私と同じようにポスターを預け荷物にしてしまって、届かなかった人も少なからずいたらしい(そして私と同じように現地で印刷した人も)。
それに旅費の工面や宿の手配が出来なかったんじゃないかなぁ、と思われるパターンもあった。
もちろん「Abstract(要旨集)に載れば業績になるから、(大金かけて)行くことない」という確信犯的にキャンセルする人もいたに違いないけど(こういう人は毎回いる)。


そうだ、忘れてならないのは、あのひどいBBQ!
最終日の2日前の夜に「エジンバラ動物園でBBQ」と銘打ったソーシャル・プログラムがあった。
しかしこのBBQ、出てきたのは下の写真のような「BBQ food」と1人2ドリンクのみ(ちなみにチケット代は1人15ポンド=約3000円)。
画像

さらに、雨の為に会場が屋外から屋内に変更になったら、食べ物にありつくまで長蛇の列。ハンバーガー1個の為に45分以上並んだ人もいるらしい(ちなみに私は20分ぐらい並んだ)。
いやーこれは絶対、学会史に残る最悪の企画ですよ(少なくとも私が参加したこの8年間の中で最悪)。
きっとこの先数年は、どんなひどいことが起きても「でもあのエジンバラのBBQに比べれば…」と言われるに違いない!

次の国際霊長類学会(2010年)は京都で開催されることが決まっているので、外国人の友人・知人達からは「次は日本だからこんなひどいことはないわよね!きっと!」と冗談混じりにプレッシャーまでかけられる始末…
イギリスは学会慣れしているだろうと思って、えらい目にあってしまった。

長くなってしまいましたが、とりあえずこんなところで。



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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
波乱万丈ですね。
暑い京都で、冷房なしとは!お体大切になさって下さい。
岩田です
2008/08/13 17:55
岩田さん、コメントありがとうございます。
確かに今回の学会は当初の予想よりは波乱万丈でした(笑)
個人的には前回のウガンダでの学会の方が印象深いですが。
なんせロウソクの明かりの下で発表練習しましたから!

クーラーは買いましたが、設置は来週になりそうです。
今朝もあやうく脱水症状になりかけて、あわてて起きました。
寝ている間は気をつけないと本当に危ないです。
ボルネオの熱帯雨林よりよっぽど生命の危険に満ちているかも、冷房なしの京都の夏は(笑)
nouko
2008/08/13 20:16
猿学会(IPS)は貧乏なんだね〜?!
そんなBBQ、みっともないから企画しない方がいいよ。
(次回の京都では主催者側も気をつけるべきだね)

結晶学会(IUCr)でバーガー一個とドリンク2杯なんてファースト・フードだったら、
たとえタダでも、怒るか呆れて帰る人続出だと思う。

まるで「さっさと喰って、早く帰れ!」態度でしょ?
UKの猿学者は感じ悪いなぁ〜
Dr.Satoru
2008/08/14 00:59

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