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zoom RSS (文献追加)【ニュース】二足歩行は樹上生活が起源…オランウータン分析で新説

<<   作成日時 : 2007/10/26 13:05   >>

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同じ著者が下記のような論文を出版したので、追加で掲載します。

Thorpe SKS, Crompton RH, Alexander RM. 2007. Orangutans use compliant branches to lower the energetic cost of locomotion. Biology Letters 3(3):253-256.

要旨をまとめると以下のようになります。

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Sway(幹に体を垂直にしてつかまり、木全体を揺らして、その反動を利用して隣の木に移動する方法)は非常にエネルギー効率の良い移動方法であり、ジャンプして移動するのに比べて、半分のエネルギーで移動できる。
また、樹上から地面まで下りて、地面を歩いてとなりの木に登る、という方法と比べても、はるかに少ないエネルギーで移動できる。

それぞれの方法で移動する場合に必要なエネルギーコスト

Sway: 0.12kj(キロジュール)
ジャンプ: 0.25kj
下りる+歩く+登る: 2.8kj

※Table1のrehabilitant mother(推定40kg)の場合

Swayによく使われるのは直径10cm以内の木か木性ツルである。
野生の(スマトラ)オランウータンの雄は、移動の約10%でSwayを使っている。
この論文は、「支持体の弾性を利用した移動方法=枝や幹をしならせてそのしなり(弾性)を利用して移動する方法」が非常にエネルギー効率の良い移動方法であることを、初めて立証した研究である。
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1回1年間の調査で4本も論文を書いて、しかもどれもレベルの高い雑誌に掲載って、すごいよなぁ。
ホント、今どきのフィールドワーカーの鏡ですよ。
しかしさすがにこのデータからもうでないだろう。
さて次はどこで何をするのでしょうか、Thorpeさん。
(2007年10月26日追記)

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以下、もともとの記事(2007年6月)↓

先週のScienceにこういう記事が出て、日本の新聞でも報道されましたね。

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二足歩行は樹上生活が起源…オランウータン分析で新説

【ワシントン=増満浩志】人類の特徴である直立二足歩行は、祖先がチンパンジーから分かれた後の地上生活で始まったのではなく、樹上生活をしていた、より古い祖先まで起源をさかのぼれるという新説を、英バーミンガム大などの研究チームが発表した。

 オランウータンが細くてたわみやすい枝を移動する際、二足歩行を多用していることがわかったという。1日付の米科学誌サイエンスに掲載される。

 研究チームは、インドネシアのスマトラ島で1年間、野生のオランウータンを観察。樹上を移動する際、どのように体重を支えているかを分析した。

 その結果、腕でぶら下がっての移動が約半数を占めたが、二足歩行も13%に上り、特に太さ4センチ未満のたわみやすい枝を移動する時は二足歩行の割合が22%と、四足歩行の16%を上回った。二足歩行の90%以上が脚を伸ばした直立姿勢で、75%は腕でバランスをとっていた。

 研究者は「化石を分析する際、二足歩行の痕跡に頼って人類か類人猿かを見分けることはできないのではないか」と指摘している。

(2007年6月1日10時35分 読売新聞)

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チンパンジーやゴリラのナックル・ウォークの方が特殊化した形態で、人間はナックル・ウォークをしないで樹上→?→直立二足歩行で進化しただろうということは前から言われていたから、とりたてて目新しい説ともいえない。

ヒトがなぜ直立二足歩行を始めたのか、には諸説があり、その中には樹上生活でぶら下がりやよじ登りをすることで、直立する姿勢を獲得していった、という説もあった。この論文の新しいところは、(ぶら下がりやよじ登りだけでなく)樹上で細い枝やツルをつかんで移動する時に、直立二足の姿勢で行う頻度が高い、ということを明らかにしたこと。同時に、樹上での直立二足での移動は、効率よく安全に移動できるから、非常に適応的であると指摘している。

この論文の筆者、Thorpeさんには、去年、国際霊長類学会で会ったけど、小柄でかわいらしい方でした(本人の公式サイトはこちら)。
私が上映したテナガザルのビデオについて「ぜひコピーが欲しい!」と言われたので、後で送ってあげた。
論文に使えるようなものではないけど、Locomotionをやっている人には確かに興味深い映像かも。

ちなみにThorpeさん、1回(1年)の野外調査のデータを使って、もう3本も論文を書いている。

1.Thorpe SKS, Crompton RH. 2004. Locomotor ecology of wild orangutans (Pongo pygmaeus abelii) in the Gunung Leuser Ecosystem, Sumatra, Indonesia: A multivariate analysis using log-linear modelling. American Journal of Physical Anthropology 127:58 - 78.

2.Thorpe SK, Crompton RH. 2006. Orangutan positional behavior and the nature of arboreal locomotion in Hominoidea. American Journal of Physical Anthropology 131(3):384-401.

3.Thorpe SKS, Holder RL, Crompton RH. 2007. Origin of Human Bipedalism As an Adaptation for Locomotion on Flexible Branches. Science 316(5829):1328-1331.(今回の論文)

掲載される雑誌もレベルアップしている。
彼女の研究って、偏執的ともいえるほど細かい分析しているけど(特に1)、3は(雑誌の速報性が高いという性格もあって)かなりコンパクトにまとめて、わかりやすくなっている。
ちなみに2の考察では、3につながる「手を補助として使った直立二足の移動を従来の研究では二足歩行に入れていなかったが、重心がどこにあるかを基準に見るなら、手を補助に使っている移動も(直立)二足歩行だ」という指摘がある。
ここをふくらませる気なのかなぁ、と思っていたけど、まさかScienceに載るとは。

まさか、もうこれ以上論文書かないよね、このデータでは(笑)
次はどんな研究をするのでしょうか。
ニシゴリラの樹上移動かな?


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