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zoom RSS <追記>ジョン・マキノン「わが内なる類人猿」

<<   作成日時 : 2006/12/07 19:45   >>

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とっくの昔に絶版になり、古書店にほとんどでまわっていないこの本、やっと大学の図書館から借りて読むことができました(古い本がしまわれている閉架書庫で眠っていた…)。

オランウータンのパイニアワークで有名なマキノン、なんとゴリラ、チンパンジー、ボノボまで見ていたとは!(もちろん全て野生)
テナガザルもボルネオだけでなく、マレーシア半島でシロテテナガザルやフクロテナガザルまで研究しているし。
今でも大型類人猿全種見ている人なんて、世界にそんなにいないだろうなぁ。
すごい
もっともボノボはちらっと見れた程度だけど。

しかし運のいい人だよなぁ。
たった数ヶ月の短い調査期間の中で、テナガザルの新しいカップル成立→新テリトリー確立の過程を観察しちゃうし。
ボノボもちらっとはいえ、とりあえず野生個体を見るところまでたどりついたし。

出版が1978年だから、まだまだ限られた情報しかなかったはずなのに、意外に「正しい」推測もあり、この人の研究者としてのセンスはやっぱりすごい。
しかし、訳者も言っているように、最後の章は優生思想が色濃くて、ななめ読みできる人にしか勧められない本だけど…
全体に、オランウータンに関心がある人というより、ある程度、霊長類学や生物学の専門知識を持った人の方が「過去の予測(推測)」を楽しめると思う。

マキノンの論文は出版されて30年近くたった今でも、毎年何本もの論文で引用されるから、ああいう論文1本書けるだけでも研究者冥利に尽きるよなぁ。


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2006.12.7 追記

印象に残った記述をいくつか引用

p133
ボルネオ、スマトラ 一九六八〜七一年
最後にあらゆる苦労と努力がみのって、オランウータンがついに見つかったという時には、熱烈な類人猿追跡者は、自然の偉大なドラマの一幕を見たということで酬われるだろうか?否である。彼が見つけたものは、毛むくらじゃらで不機嫌な、およそ動きのない、ナマケモノのごときしろものである。したがって、おれはこんなにめったと見られぬ珍しい動物とさし向かいで会うことができてなんと幸せなんだろう、と自分にいい聞かせ続けることによってのみ、彼は家に逃げ帰ろうとする衝動をやっとがまんできるのだ。また彼は、自分の研究対象と鼻をつきあわせたままうんざりするほど長い時間じっとしているために鉄の意志をもたねばらならない。オランウータンにこの根くらべの勝者への賞牌として興味ある新事実を提供してもらうには、それしかないのである。

野生オランウータンを研究する「現実」をこれほど見事に描き出した文はない。
オランウータンの研究がすすまない理由、よく言われるような「高温多湿で環境が劣悪」「発見が難しい」じゃないんだよなぁ。
絶対コレですよ、「最後にあらゆる苦労と努力がみのって、酬われるだろうか?否である。」
「否である。」って迷いなく断定していところに実感がこもっていて、思わず笑ってしまった。そうだよね〜。

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p229
技術と文化
…人類の発明の中の若干は本来の能力のひらめきによるものだが、大多数はたぶん昔の類人猿の、よく観察し、理解し、見習う、という行動によっているのである。現代の潜水艦や航空機も自然界から引き出したものを要求に合わせて変形した最新の着想の例にすぎない。科学研究の基本は、われわれの周囲にあるものを化学的、物理学的、生物学的に精密に調べるところにある。だからこそ人類は自らの便益のために手を加えて利用できるのである。

「科学なんて何の役にたつの?」という人への回答の一例

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p284
人間と家族
…人類はお互いの結束を得るのに常に共通の驚異や挑戦者を必要とする種であって、当面の危機のない時は、しばしば化物、怪物、悪霊、悪鬼の形をした驚異をつくり上げてきた。人びとはこれまで、自らつくり出した超能力をもつ類人猿に多くの架空の恐怖描き出してきたが、今ではそれよりも、星でうまった宇宙のどこかに人類の敵の超人類がいるという可能性があるわけだから、その起こり得る侵略の脅威にそなえて軍事同盟をつくればよいのかもしれない。

ハリウッド映画史はまんまですね。キングコング→エイリアン(笑)

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p295
人間と家族
人間の満足感や充足感は、現実的な目標が達成されることと、なかまから尊敬されたり認められたりすることから生じる。それでもこの単純な幸福の概念さえ、価値観が急速に変化しつつある現代社会では到達しがたいものになっているようだ。

約30年前の言葉。文化人類学者や哲学者とか、こういうことをいつも考えている人にとっては当たり前のことかもしれないけど、今この言葉を読んだら、ハッとする人は多いと思う。
世界中、いつの時代のどんな文化圏でも通用しそうな「幸福の定義」。

2007.7.7追記
今は「幸福」に関する科学は、もっと発展しています。
参考:進化心理学的相対主義者が語る「目からウロコの幸福学」

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この本、ヤフオクで落札しました。なんと\400で!ヤフオクはプレミアがつくような本がビックリするくらい安値で出品されることがあるので、アラート登録しておくと便利ですよ。あっ、でも海外発送不可の場合が多いので、管理人さんには利用価値低いですかね。
お気楽
2006/11/13 16:18
そうでした!その手をすっかり忘れていました。
さっそく楽天ブックスをチェックして600円で購入。
お気楽さん、情報ありがとうございました。
しかし「ズーブックス」や「オレひとし」といった絶版のオランウータン本は、やはり出品されていない模様。やっぱりなぁ。
nouko
2006/11/13 17:43
先日、オランウータンの追跡調査に3日付き合ったけど、
まさに「退屈」の一語につきるね!!
(久々に新しく覚えたマレー語が「ボサン」だもん)

多摩のジプシーやポピーくらい動いてくれると、楽しいのにねぇ。
Dr.Satoru
2006/12/07 23:20
日本の霊長類学者からも「俺はオランウータンは研究できないと思った」と言う意見を聞くことが多い。
特にちょっとでも野生を見たことがある人ほど強く否定する傾向あり「あんなもんつきあいきれん」(苦笑)
nouko
2006/12/08 09:44

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